4.韓国的人間関係

今回の旅で「へぇっ!」と思ったことをメモしてみた。
ひとことでいうと日本よりずっと「ディープな」人間関係があるように思える。

●スキンシップが大事

 ソウルの代表的な繁華街、明洞(ミョンドン)などを歩いていると、必ず腕を取り合って歩いている女性2人組を目にする。彼女らは同性愛者でも何でもない、女友達同士ではそうするのが当然、そうしない方が「友達ではない、ビジネスライクなお付き合い」ということになってしまうらしい。ちなみに男性同士だと、肩を組んだりするそうである。


ソウルのメインストリート、世宗路。後ろにあるのが韓国で最も尊敬されている武将、李成桂の像

●真面目な広告

 韓国では街中の広告の表現方法が、真面目で「教訓」っぽいのが面白いなあと思った。 例えば、韓国では東南アジア系の人々に対する差別が社会問題となっているそうで、地下鉄の列車にも注意を喚起するための広告が貼ってある。日本ならさしずめ「差別をなくし、明るい社会を作りましょう」といったところだろうか。ところがその広告には「私たちの国はたくさんの戦争や植民地支配を経てきて、その苦しみを一番よく知っているはずです。だから、他の国の人に同じような苦しみを与えるのはやめましょう」といったことが書かれているらしいのだ。
  また、列車の車内に乗客のマナーに関する広告が出ている。そこには「車内での携帯電話使用の禁止」などの表示があり、最後にひとこと「マナーを守って、明るい旅行文化を作りましょう」。 とにかく、真面目なのである。

●割り勘は嫌い

 今回の旅行の間中、ほとんど「割り勘」というものをさせてもらえなかった。日本人的感覚からいうと、貸し借りなしで後くされもなくていいようなものだが、韓国の人的な感覚でいうと「割り勘だなんて水くさい」ということになるのだ。
  何人かが集まって食事をすれば、年長者が払う、友達の中に豪華な買い物をした人がいたら、今リッチなはずのその人が払う、今回でいうと、日本からのお客さん(私)を歓迎する気持ちを込めて払う・・ということになる。もちろん、食事は年長者が払えば、食後のコーヒーは年下の人が払う、というのが年下の気配りだそうだが。

 出費がかさんで大変なのでは?と思うが、韓国的感覚では「自分がおごってもらう立場のときだってたくさんあるし、長い目で見れば収支は同じ」ということになるらしい。
 「後くされのない割り勘」は、言い換えると、「この人との縁はとりあえず今回限り」ということになるが、ごちそうする・されるとなると、された側は「この恩をどう返そうか」と考えることになり、相手とのその後の関係はさらに続いていくことになる。 この習慣の中では人間関係というものをより真剣に考えざるを得ないのだ。割り勘などよりよほどセンスが問われる、面白くて難しい習慣だなあと思った。

  さて私はヒョンちゃんにどうご恩返しをいたしましょう・・・??

 

●上下関係

 韓国語で、お姉さんのことを「オンニ」と言うが、職場の先輩など、実際の姉妹でない人をこの呼び方で呼ぶのを耳にした。実際、「オンニ」と呼ばれる年長者は姉妹以上に年下の人の面倒をみる。後輩は先輩にいろいろなことを相談するし、先輩も、後輩にとって良くないと思うことは、遠慮なく厳しく叱責するようなこともある。

 また韓国で一番大事にしなければいけないのは「親」。だから、日本みたいに「お国のために」命を投げ出すという発想にはならない。ただ、国王は国の「親」だから、その親のために戦うという発想になるそうだ。


李氏朝鮮時代の王宮「景福宮」にある「千秋殿」という建物。ここでハングルの作成等が行われたそうです。
(同じ名前なもんで、愛着が・・)


大統領官邸。見ての通りの「青瓦台」。この付近は殆ど撮影禁止だが「ここなら写真okです」とヒョンちゃんが教えてくれたから撮れた、貴重な1枚。

●ルーツは大事

 韓国では「姓」がとても重要なアイデンティティであるという話はよく聞くが、今回、ヒョンちゃんの話を聞いてまさにそれを実感した。 彼女の姓の一族は、昔から先進的な人が多かったそうで、「過去の政治的な闘争の場で、いつも先走って殺されるようなタイプ」の人を輩出してきた家系だとか。・・そんなことをアッケラカンと話してくれたこと自体に私はビックリ。日本人の中で自分の先祖のそんな話がサラリとできる人がいったいどのくらいいるだろう??


 また、「同じ姓を持つ人同士は結婚しちゃいけない」という習慣も有名な話だが、これも相変わらず生きているらしい。法律が改正されて、今は制度上は結婚は可能だが、実際にする人は少ないそうだ。合コンなど男女の出会いの場でも、「いいな」と思えば最初に姓を聞くのがルール、だから、「同じ姓の男女が恋に落ちる悲劇」というのは考えられないそうだ(ちなみにヒョンちゃんの姓は、韓国で最も多い金さんと結婚できない家なので、多くの出会いを逃してしまう損な姓だと言っていた) 。
  また、家系を絶やすことは良くないこととされる一方、婿入りという習慣がないため、男の子を欲しがる気持ちは日本以上に強いとのことである。

*  *  *

 韓国はこれまで戦争と占領の繰り返しだった。だから「人と最初に会ったときに、その人が敵か見方かを判別する」のが人との付き合い方だそうだ。また、「アンニョンハセヨ」というあいさつも、もともとは「安寧ですか?」つまり「今日もご無事ですか?」という意味から来たものだったりする。
  中国と日本、2つの国に挟まれたインターフェイスの地で生きる人々。常に大国・中国との厳しい関係の中で誰が本当に信用できるかを見抜き、ひとたび味方と思った人とは濃い人間関係を取り結ぶ。そんな印象を受けた。 それに比べたら私はやっぱり日本人、何事もあいまいさを良しとし、和をもって尊しとなす日本人なのだということをつくづく感じてしまう。

 こんなに近い隣の国で、しかも見てくれはこんなに似てるのに、内面はこれほど違う人が住んでいるという事が驚きだ。なるほど、異なる民族がお互いを理解し合うというのは難しいことなのだろう。一歩ボタンを掛け違えれば、すぐに関係がこじれるのもわかるような気がする。

 でも観光ガイドの仕事で多くの日本人と接するヒョンちゃんはこう言っていた。

「日本に友達ができるのはとてもいいこと。イヤな日本人に会っても『日本人はこんな人ばかりじゃない』と思えるから」

 私も、今回の旅の思い出がある限りは、韓国という国を嫌いになることはないと思う。日本語が堪能で日本の歴史や文化にも造詣が深く、自分の国のことをきちんと相対化して語ることができる、そして常に勉強熱心なヒョンちゃんは、同年代の友人として本当に尊敬できる人だと思った。そして、焼肉よりも汗蒸幕よりも何よりも、そんなヒョンちゃんとの時間が楽しかった。

日韓交流年、そんな多くの出会いが積み重なって、2つの国の関係ももっと良いものになりますように・・・


帰りの空港にて。韓国風に腕組んで・・

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